先日、某有名教育関連会社で働く
若い男性とお話しする機会がありました。

彼は理想と現実の狭間で苦しんでいる様子で、
消え入りそうな夢と希望を一生懸命にかき集め、
私に吐露しました。



「こういう会社って、夢を持って入社しちゃダメなんですよね」

「子供はカモ、親はカネヅルとしか見てないんですよ」

「この母子のために何ができるだろう?なんて考えてたらクビにされますからね」



学校も似たり寄ったりでしたよ。

個別にアプローチした方が生徒達の習熟度は上がると思い、
一人ひとりにプリントを作ったところ、
「他の先生もしなくちゃいけなくなるから」、という理由でストップをかけられました。
ならばせめて放課後にフォローを・・と思って授業をしたら、
同じ理由で止められましたよ。

ここでは自分の力を発揮できないと思い、
私は教師を辞めたのです。

そんな世界から離れてかなりの時間が経ったので、
久々に聞く教育界の実情に、懐かしさを覚えました。



ぼんやりと聞いている私に、彼は質問を投げてきました。
何か言葉が欲しかったのでしょう。



「先生は子供の教育にお金をかけるべきだとお考えですか?」



彼の表情から推して、Noという返事を期待しているようでした。
おそらくその大会社、
悩める親御さんの足元を見て
かなりの額を吹っ掛けているのでしょう。

けれど私は、こう返事をしました。



「もちろんです。」



案の定、彼の表情は曇りました。

構わず私は続けました。



「親は自分の子に何が必要なのかをきちんと把握し、
正しいところに正しく投資し、正しく時間を費やすべきなんです。
大切なことは、いくら投資するかではなく、何にどう投資するかですよ。」



そう言うと、彼の表情は一変しました。



「僕もそう思います!」



まだ若いその男性は、熱い思いと大きな夢を持って、
希望に満ち満ちて入社したにも関わらず、
現実は、教育とは名ばかりの売上至上主義。

その上・・


「バカな親があまりにも多過ぎる!
「だってそうでしょ?ちょっと考えたらわかりそうなもんですよ。騙されてるって。」



騙す側のしたたかさ、騙される方の愚かさを目の当たりにし、
彼の夢と希望はガラガラと音を立てて崩れていったのです。



「うん。その通りですよ。
私も教師を辞めてから、あちこちの会社を見て回りましたからね。
その辺の事情はよくわかっていますし、見解もあなたと同じです。
けれど、その騙す騙される悪循環は、断ち切れます。」



彼は驚いた表情で私を見ました。



「あなたも気付いていらっしゃるのでは?」

「親・・ですか?」

「そうです。親です。母親です。
母親というものは、元来とても強く賢いものなんですよ。
母性に溢れ、子供を守るためには夜叉にさえなれるような、
そんな強い生き物なのです。
けれど昨今の閉鎖的な子育て事情の中にあって、
母親の力が萎えています。イコール、国力も低下しています。」



彼はうんうんと力強く頷きながら聞いていました。



「お母さんがたをサポートし教え導くことが、
今何より大切だと私は思うんです。」

「僕もそう思います!!! うわ~ 鳥肌立ってきた」



私は彼に、今お母さん応援のために取り組んでいること―
セミナーや勉強会等の話をざっくりとしました。



「先生、今日先生とお会い出来、このようなお話しをお聞き出来たのは、
けっして偶然じゃないと僕は思います。」



そしてこう続けました。



「先生、僕はちゃんとした教育者になりたいんです!」



なりたかったけど、なれなかった。
けれどまだ夢は捨てていない!

そんな風に聞こえました。



悪循環を断ち切るため、
私は今まで若いお母さんがたの教育に重きを置いて活動してきました。
それは見方を変えると、教育者という教育者を見放していたということになります。
もうこやつらには何言うてもアカン、ならば我々母族が賢くなるしかない!と。

けれど、志を持った本物の教育者が増えてくれたら?



私は今彼のような熱い若者を育てる時期に来ているのかもしれない。



「きっとなれますよ。」



その情熱の火を自力で燃やし続けることができれば、
という条件節は、心の中にしまっておきました。



数年後、また同じ目をしたあなたにお会い出来たら、
一緒に仕事をしましょう。